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たった一枚のガラスで、ここまで悩む。これが設計の面白さ
店内と作業側の間に、ガラスを1枚設ける必要が
あるかもしれない、という話です。
今日は、あるお店の改装打ち合わせでした。
お客様、設計士さん、そして僕の3人での打ち合わせです。
事前にお客様とは「どんなお店にしたいか」という
コンセプトをじっくり話してきました。
来店された方と自然に会話が生まれるようなお店。
距離が近くて、気軽に声をかけられるような空間。
そんな、あたたかい関係性が生まれる場所を目指して、
ここまで計画を進めてきました。
ところが、打ち合わせを進める中で、どうしても
必要になりそうな要素が出てきました。
理由は機能面。
粉やほこりが客席側にいかないようにする為の対策です。
衛生面や運営面を考えると、ガラスはあった方がいい。
でも、コンセプトを考えると、本当にそれでいいのか
という迷いも出てきます。
ガラスがあることで、空間にワンクッション生まれる。
声のかけやすさや、距離の近さが少し
変わってしまうかもしれない。
「会話がしにくくなるんじゃないか」
「ガラス越しでも存在に気づけたら十分じゃないか」
たった一枚のガラスの話で、気がつけば1時間近く
議論していました。
外から見れば、ほんの小さなことかもしれません。
でも、空間づくりにおいてはこのたった一枚が
空気感を大きく左右します。
理想のお店の姿と、現実的な機能性。
このふたつの間で、どう折り合いをつけていくか。
設計の現場では、いつもこのせめぎ合いがあります。
簡単に答えが出る話ではないからこそ時間をかけて
考える。そして最終的にはお客様も僕たちも
「これでいこう」と納得できる形を探していく。
そのプロセスそのものが、設計の醍醐味やなと、
あらためて感じた打ち合わせでした。
完成したときに見えるのは、きれいに仕上がった空間
だけかもしれません。
でもその裏には、今日のような「たった一枚」をめぐる
真剣な議論が積み重なっています。
やっぱり、お店づくりは面白い仕事です。
人としての在り方は、仕事の外でも試されている
先日、あるお客様のところへ伺いました。
そのお客様とは、2年ほど前に大きな工事を
させていただいたご縁があります。
玄関ドアの交換工事もさせていただいたのですが
工事後しばらくしてから不具合が出て
部材の交換対応をさせていただきました。
それ以降も、開閉時の音について何度かご連絡を
いただいています。
今回も「キュッキュッと音が鳴る」とのことで、
メーカーさんに来てもらい、合計5人ほどで
現地確認をしました。
取り付け自体に問題はなく、
明確な原因も特定できないまま
部材の調整や清掃を行い
1時間半ほど作業した結果、
ひとまず音は出なくなりました。
ただ、はっきりとした
原因が分からないままの対応になった為
少し気持ちの悪さが残る終わり方ではありました。
それでも最後にお客様がかけてくださった言葉は
本当にありがたいものでした。
また同じようなことが起きたときに
自分たちで何かできることがあれば教えてほしいとか、
建具は気温や湿度で伸び縮みするから、
そういう影響もあるのかもしれないですねとか。
こちらを責めるどころか、一緒に原因を考えようと
してくださる姿勢でした。
何度も同じ箇所で不具合が起きている状況です。
本来であれば強く言われてもおかしくない場面です。
それでも終始やわらかく接してくださる。
その姿に、あらためて自分はお客様に
恵まれていると感じました。
建築の仕事は「クレーム産業」と言われることも
あります。
確かに、いくらでも指摘できるポイントが生まれる
仕事です。
それでも、こうして温かい言葉をかけてくださる方に
支えられて仕事ができていることを、あらためて
実感した時間でした。
帰り道、そのことを振り返りながら、自分自身の
普段の態度についても考えました。
例えば、コンビニで少し待たされたときに
イライラしてしまうことがあります。
その時、店員さんに対して無意識に無愛想な態度を
取っていないかと思うことがあります。
仕事では丁寧に人と向き合おうとしているのに、
日常のちょっとした場面で余裕をなくしてしまう
自分の小ささを感じました。
仕事の場面だけでなく、プライベートでも、どの
瞬間を切り取られても恥ずかしくない人でありたい。
そんな人間的な在り方を大切にしていきたいと、
あらためて思いました。
「神は細部に宿る」と言いますが、それは仕事の
仕上がりだけではなく、日々の振る舞いにも
当てはまる言葉なのかもしれません。
これからも技術だけでなく、人としての
在り方も磨いていきたいと思います。
一緒にやるなら「価値観」が合う人とやりたい
仲間や組織で何かを進めていくうえで
やっぱり大事やなと改めて感じているのが
「価値観の共有」です。
今、弊社では毎月勉強会を開催していて、
地元でカフェやお店をされている方々と一緒に
学ぶ場をつくっています。
そのご縁から、有名店をされているプールさんに
ゲストスピーカーをお願いしたことがきっかけで
つながりが生まれました。
そこから何度か電話でやり取りをしたり、
お店に伺わせてもらったりする中で、
先日こんなお話をいただいたんです。
「ぜひ一緒に仕事をしてみたい」
プールさんは飲食店のオーナーで
建築が本業というわけではありません。
でもお店に行かれた方ならわかると思うんですが、
なかなか真似できない世界観と、抜群のセンスを
持たれている方なんです。
雑貨を選ぶこと、家具を選ぶこと、照明を選ぶこと。
そういうコーディネートが大好きで
「そういう部分で一緒に何かできないか」
というご提案でした。
正直、これはうちにとってものすごくありがたいお話です。
有名店のオーナーさんと一緒にお仕事ができるなんて
なかなかない機会ですから。
でも僕がその話を「ぜひやりたい」と思った一番の理由は
実はそこではありません。
一番はプールさんとの「価値観」が似ていたことです。
弊社はリフォームをメインにしています。
新しいものをどんどん作るというより
古いものを活かす仕事です。
古いものには歴史があります。
一見ゴミに見えるものでも手を加えることで価値が上がる。
むしろ、新しいものには出せない味や物語が生まれる。
そこに、僕はものすごくやりがいを感じています。
プールさんも同じ考えを持たれていました。
例えば、食器やカトラリー。
少し欠けていたり、くすんでいたりするものも、
長く使われてきたものを大切に使っている。
「古いものには歴史がある」
「ものを大事にしたい」
そういう話を聞いたときに
「あ、価値観が近いな」と感じたんです。
ここがズレていると、どんなにスキルがあっても、
どんなに有名な人でも、きっと一緒にやるのは難しい。
でも根っこの考え方が似ていると、仕事の方向性も
自然と揃っていきます。
だからこそ「ぜひ一緒にやってみたい」と思いました。
これからプールさんと打ち合わせを重ねながら、
家具や照明、雑貨のセレクトなども含めた
新しいサービスとして形にできたらと考えています。
きっとプールさんのセンスに惹かれている方も多いと思うので、
しっかり形にして改めてリリースできたら嬉しいです。
また進展があれば、ブログでもご報告します。
どうぞお楽しみに。
見積りにない「ひと手間」が、いちばん記憶に残る仕事になる
弊社はリフォームの仕事をしています。
店舗づくりも、新築ではなくリフォームがメインです。
新築の場合はすべてが新しくできて当たり前。
でもリフォームの場合はどうしても
新しくなる部分
既存のまま残る部分
この境目が生まれます。
はっきり分かれる部分もあれば、工事範囲としては
少しグレーな部分も出てくるんですよね。
例えば、窓枠を塗装する工事だったとして
「ここまで塗るか、ここは既存のままにするか」
電気工事で壁をめくるなら
「どうせならこの見えている配線も壁の中に
入れた方がきれいになるんじゃないか」
そんな場面が現場ではよくあります。
見積りには入っていないけれど
ついでにやっておいた方が絶対きれいになる
そんなグレーな部分。
実は、こういうところにこそ
仕事の本質があるんじゃないかと思うんです。
お客さんは、今回の工事に含まれているとは思っていない。
だからこちらから「やりましたよ」とわざわざ
言うこともない。
でも、完成後にふと気づいたとき
「あれ、ここもきれいになってる」
そんな瞬間があったとしたら。
それってちょっと嬉しい気持ちになると思うんです。
商売とは価値と価値の交換。
お客さんはお金という価値を支払い
僕たちは空間をきれいにすることや
ストレスを減らすこと
使いやすくすることという価値を提供する。
でもこの交換がぴったり同じ量だったら
実は感動は生まれにくい。
なぜなら
「お金を払って、それに見合ったサービスを受ける」
これは当たり前だからです。
じゃあどんな時にお客さんは喜んでくれるのか。
それは予想していなかったことが起きたとき。
見積りにないひと手間は
まさにそのひとつだと思っています。
もちろん、何でもかんでもサービスすればいいわけじゃない。
でもどうせやるなら、ここまでやっておこう
この方が絶対きれいになる
この方があとあと気持ちよく使ってもらえる
そんな視点で動けるかどうか。
ここが、お客さんとの関係性をつくる
分かれ道のような気がしています。
これは建築に限らず、どの業界でも同じことが
言えるんじゃないでしょうか。
「そこは関係ない」と切り分けるのか
「ついでにやっておこう」と一歩踏み込むのか
その小さな違いが
ただの取引相手になるか
またお願いしたい人になるか
を分けているのかもしれません。
リフォームの現場で、僕たちが大事にしているのは
そんな見えにくい部分の仕事だったりします。
参考になればうれしいです。