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これじゃないよね、と言えた日
今日は、ドーナツ屋さんを開業されたい方
との打ち合わせでした。
いまは図面の詰めや、間取り、設計の細かな部分を
進めている段階です。
設計担当、つくり手側、そしてお客さん。
みんなで一つのテーブルを囲みながら
話を重ねています。
今日、すごくうれしかったことがありました。
それは
「みんなが同じ違和感を持てたこと」です。
今回のお店は米粉ドーナツ。
米粉は小麦と違って、空気に触れると
固くなりやすい性質があります。
お茶碗のご飯をラップせずに置いておくと
表面が乾いて固くなる。あれと同じです。
だから、品質を守るためには
袋に入れる、ラップする、密閉する、
といった工夫が必要になる。
そこで僕が
「例えば、袋詰めでこんな陳列方法も
あるんじゃないですか?」
と、参考写真をみんなに共有しました。
袋に入ったドーナツが、
きれいに並んでいる写真。
合理的です。
品質管理としては正しい。
でも、その写真を見た瞬間でした。
なんとなく
「これじゃないよね」という空気が流れました。
誰かが強く否定したわけではありません。
でも、みんなが同じ違和感を抱いていた。
袋詰めにすることで
出来たて感が薄れる。
ライブ感が消える。
どこか既製品っぽくなる。
このお店が届けたいのは、
ただのドーナツじゃない。
揚げたての香り。
その場の空気。
ちょっとワクワクする時間。
それが、袋に入った瞬間に
少し削がれてしまう気がしたんです。
もちろん、袋詰めが悪いわけではない。
でも「このお店としては違うよね」
と、みんなが同じ方向を向いて言えました。
これ、実はすごいことだと思っています。
細かいことです。
でも、こういう小さな判断の積み重ねが
お店のらしさをつくる。
きっと何度もコンセプトを話し合ってきたから。
どんな空間にしたいのか。
どんな人に届けたいのか。
どんな体験をしてほしいのか。
その時間を一緒に積み重ねてきたからこそ
「なんとなく違う」が共有できた。
僕はその瞬間が、とても嬉しかったです。
設計や施工って
図面を描くことだけじゃない。
空気を描くこと。
体験を守ること。
そのために、ときに合理性よりも
大事なものを選ぶことがある。
ささいなことに見えるけれど
そこにこそ、そのお店の魂が宿る。
今日の「これじゃないよね」は
きっと、このドーナツ屋さんの未来を
少しだけ強くした気がしています。
こうやって
みんなで同じ景色を見ながら進めること。
やっぱりお店づくりって
いい仕事やなと思った一日でした。
必要とされるだけでは事業にはならない
最近、自分の中でちょっと
気をつけなあかんなと思う感覚があります。
これ、起業したての頃の感覚にすごく似ている。
いま僕は、新しい取り組みを始めています。
お店をつくりたい人を、
もっと全力でサポートできる体制を整えようと。
勉強会をしたり
事業計画を立てる講座をしたり
深層心理を探るセッションをしたり。
まだ走りながら整えている段階です。
ありがたいことに
じわじわと来てくださる方が増えてきている。
「すっきりしました」
「背中を押されました」
そんな声もいただく。
正直、めちゃくちゃうれしい。
でも、ここに落とし穴があるなと感じています。
いまは、ほとんどがボランティアに近い状態。
収益には結びついていない。
それでも
「必要とされている」という実感だけで
心が満たされてしまう。
これ、危険です。
人から必要とされるのは
本当にありがたいこと。
やりがいにもなる。
でも、収益が伴っていないなら
それは事業とは呼べない。
自己満足で終わってしまう可能性がある。
僕が大工として独立した頃も、同じでした。
社会にポンと一人放り出された感覚。
「誰が自分を必要としてくれるんやろう」と不安になる。
そんなとき
「ちょっと取り付け手伝ってくれへん?」
と声がかかるだけで、最高にうれしい。
材料代だけでいいですよ、なんて言って
安く引き受けてしまう。
なぜなら
必要とされた、それだけで満たされるから。
でも、それでは続かない。
大事なのは
「お金を払ってでも必要とされる存在」になること。
無料だから来る。
安いから頼む。
それではなく
「この人に頼みたい」
「この会社にお願いしたい」
と対価を払ってでも選ばれる状態。
そこを目指さないと
事業にはならない。
ロマンだけでは続かない。
そろばんだけでも続かない。
ロマンとそろばんが重なったとき
はじめて健全な形になる。
僕たちは時間を使っている。
命を使っている。
だからこそ
ちゃんと対価をいただけるサービスに
磨いていく責任がある。
これから起業する方にも
同じことを伝えたい。
最初は、必要とされるだけでうれしい。
それで満たされる。
でも、自分を安売りしないこと。
きちんと価値を高めて
きちんと対価をいただく。
それはいやらしいことではなく
「続ける覚悟」だと思う。
自分にも言い聞かせながら
一歩ずつ整えていきたいと思います。
住宅地で商売をするということ
ほんと、難しいなと思う出来事がありました。
家から100メートルほどのところに
人気のパン屋さんがあります。
テレビにも取り上げられたことがあるお店で、
地域の中でも有名な存在。
娘が小さい頃は、おつかいを頼んだりもした
僕たちにとって大切なお店です。
でも、自治会長をさせてもらう中で
そのパン屋さんに来られるお客さんの車について
ご意見をいただくことがありました。
駐車場は2台分。
人気店ゆえに足りず、数分の路上駐車が発生する。
道は広く、通れなくなるわけではない。
それでも「ちょっと気になる」という声が出る。
実際、警察から注意を受けたこともあるそうです。
地域に必要とされているお店。
味も確かで、人気もある。
それでも、住宅地で商売をするというのは
こういう現実がある。
商売は味だけでは成り立たない。
サービスだけでもない。
ご近所との関係性も含めてはじめて成り立つ。
特に住宅地では
「地域の理解」が大きな要素になります。
構想段階からの声かけ。
駐車場対策。
迷惑をかけないための工夫。
それでも全員が賛成することはない。
大事なのは、反対をゼロにすることではなく
その数を増やさないこと。
そして日頃からのご近所付き合い。
挨拶やちょっとした会話。
顔の見える関係。
「いつも挨拶してくれるあの人のお店」と
「よく知らない人のお店」では
受け止め方はまったく違います。
商売は総合力。
味や技術だけでなく
地域との関係性も含めての仕事。
お店づくりは、箱をつくることではない。
その地域の中にどう根を張るかを考えること。
改めて、そう感じた一日でした。
忙しいときほど、本性が出る
今日は、なかなかスケジュールが
パンパンな一日でした。
あれもやらないといけない。
これも進めないといけない。
頭の中がずっとフル回転。
そんな中、一本の電話が入りました。
「先週の土曜日にトイレが詰まって
水浸しになってしまって…
いまは落ち着いているけど一度見てほしい」
そのトイレは、以前うちで洗浄対応を
させてもらった場所。
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
ただ、僕が行ってその場で直せる内容ではない。
専門の業者さんに見てもらう必要がある。
緊急性はそこまでない。
しかも現場は、事務所から車で約1時間半。
やるべきことは山ほどある。
「業者さん手配して終わりでいいんちゃうか」
そんな自分もいました。
でも、ふと考えたんです。
もし自分がお客さんの立場だったら。
電話一本で
「業者さん手配しておきますね」と言われるのと
「ごめんなさい、一度見に行きます」と
わざわざ足を運んでくれるのと。
どっちの人と、長く付き合いたいだろう。
答えは、はっきりしていました。
わかっている。でも、忙しい。
結局、今回は行くと決めました。
行ってよかったです。
まだ溢れた水が廊下の土間に残っていたので
ふき取り、そして
つまった原因がわかったので
僕で対応し、つまりを解消できました。
今回改めて感じたのは二つ。
一つは、
トラブルを起こさない仕組みを整えること。
もう一つは、
起きたときにすぐ動ける体制をつくること。
個人の気合いや善意だけでは、
いずれ限界がくる。
だから仕組みにする。
でも、その土台にあるのは
やっぱり「お客さんの立場で考える」
という姿勢。
忙しいときほど、本性が出る。
そのときにどんな選択をするか。
小さな出来事かもしれないけれど
こういう積み重ねが信頼になる。
今日はそんなことを、
改めて感じた一日でした。