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木にこだわるということ
作り手側として、どんなところまでこだわっているのか。
今日はそんな話をしてみたいと思います。
現在、僕たちが関わっている「肉とスパイス」さんの工事がほぼ完了し、
いよいよ10月29日にオープンを迎えます。
現場では僕自身もかなりの時間を過ごしましたが、
本当にいい空間に仕上がったと感じています。
この現場では、解体のときに出てきた古材を
ふんだんに使いました。80年、100年という時間を経た木に、
もう一度新たな居場所を与える。言うなれば
「よみがえらせる」ような感覚です。
こういう仕事が本当に好きで、
つくっていて楽しい瞬間でもあります。
ただ、古材だけでは空間全体を構成できないので、
新しい木も使う必要があります。
そのときに大事なのが「どんな木を選ぶか」。
木といっても、ヒノキ、スギ、マツ、スプルース、オークと、
さまざまな種類があります。さらに節の有無や色味、
木目の表情もすべて違う。
だからこそ、どの材をどこに使うかはすごく慎重になります。
今回の現場では、空間全体のテーマが
「赤みのある、温かい雰囲気」だったので、
スギの中でも赤身が強いものを選びました。
製材屋さんにお願いするときも「節が少なく、赤身が多いものを」
と細かくオーダーしました。そうしないと、
白っぽい木や赤白が混ざった木が届くこともあるからです。
特にこだわったのが、メインカウンターの天板。
ここにはスギの一枚板を使いました。スギは柔らかく、
どうしても傷がつきやすい素材です。
それでもあえて選んだのは、使い込むうちにできる傷やシミも
「味」になると思っているからです。
お店というのは時間とともに変化していくもの。
その変化を楽しめる空間にしたいという思いも込めました。
傷がつくことを恐れるよりも、その歴史を刻んでいくことが、
この店の魅力を育てていくと思っています。
ぜひ、完成した「肉とスパイス」さんに立ち寄ってみてください。
空間の温かみを感じながら、絶品のカレーを味わってもらえると思います。
10月29日オープンです。お楽しみに。
「松谷さんを信じていいですね」と言われて、ちょっと涙が出そうになった話。
先日、とあるお客さんからお電話をいただきました。
これから自然食品のお店をオープンしようとされている方です。
とはいえ、まだ内装の話はまったく進んでおらず、
本当にゼロからのスタート。
少し前に、「なぜお店を開きたいのか?」という話を、
時間をとって一緒にさせてもらいました。
そしてその電話は、
その後の気づきと葛藤を、
とても素直に話してくださるものでした。
「何も考えてなかった自分に気づいて、めっちゃ不安になった」
「本当にこれでいいのか、自分にできるのか、正直グラグラしてる」
そんなふうに、
今の自分を正直に話してくださったんです。
でも僕は、こうお伝えしました。
「今の時点で不安になったのは、むしろすごくいいことです」
「考えてる証拠やし、前に進もうとしてる証拠です」
不安って、
「情報が足りていない」「先が見えていない」から生まれるものであって、
動きながら少しずつ整えていけば、ちゃんと小さくなっていきます。
だから、焦らなくて大丈夫。
少しずつ、少しずつ、不安を削っていけばいいんです。
そんな話をしたあと、
そのお客さんが、電話越しにこう言ってくれました。
「松谷さんを信じていいですね」
…もう、ほんまに嬉しかったです。
電話越しだったので分かりませんが、
声がちょっと震えていて、もしかしたら涙がにじんでいたかもしれません。
僕自身も、胸がグッときて、
「絶対に信用してください」って伝えました。
新しいことを始めようとする時、
まわりがみんな応援してくれるとは限りません。
ときには、
「大丈夫なん?」
「やめといた方がいいんちゃう?」
そんな声も聞こえてくるかもしれません。
でも、そんなときにこそ、
自分のやりたいに、どれだけ正直でいられるかが大事やと思っています。
僕は、施工するだけの人間じゃなくて、
一緒に夢を支える人間でありたいと思っています。
今回のやりとりを通じて、
「この人と一緒に絶対に成功したい」
そう強く思いました。
夢って、誰かと一緒に育てていけるもの。
孤独じゃなく、対話しながら、整えながら、前に進んでいくもの。
これからも、
「信じていいですね」と言ってもらえるような仕事をしていきたいと思っています。
#信じてもらえる仕事
#お店づくりのはじまり
#不安との向き合い方
#夢は対話の中で育つ
#一緒に前へ進む関係
お店づくりの軸を見つける対話
今、お店を始めたいというお客さんと打ち合わせをしています。
その方は自然食品を扱う小売業を考えておられて、
できるだけ多くの人に来てもらえるお店にしたいという
想いを持たれています。 お店を開くとき、やっぱり一番の不安は
「どうしたらお客さんが来てくれるか」なんですよね。
そこを考えるとき、アイデアはいくらでも出てきます。
たとえば、定期的にイベントを開くとか、
旬の野菜を多く揃えるとか、魅力的な商品を置いてみるとか。
ポイントカードで来店動機をつくるのも一つの方法です。
もちろん、どれも悪くない。でも「あれもこれもいいよね」
となってしまうと、お店の方向性がごちゃごちゃになって、
一貫性のない空間やコンセプトになってしまうリスクがあります。
そこで今回は「このお客さんは一体どんなお店にしたいのか」
という根本を掘り下げる時間をとることにしました。
軸となる想いを明確にし、それをもとに商品や空間、
サービスのすべてを設計していくためです。
約2時間の対話を通じて、最初はなかなか本質にたどり着けませんでした。
僕の質問の仕方もまだまだだったのか、
少し表面的な話が続きました。けれども、ある瞬間にお客さんが
「私、こういう商品はあまり売りたくないんです」と話されたんです。
その言葉がきっかけでした。 たとえば青汁や粉末酵素、
ペースト状の健康食品。一般的に「自然食品」と言われるものでも、
その方は置きたくないと言われたんです。僕からすれば、
自然食品のお店には合いそうな商品に思えたのですが、
その違和感こそが大事なポイントでした。
なぜそれを置きたくないのか。そこを掘り下げていくと、
お客さんの本当の想いが見えてきました。
それは「家族の食卓に会話が生まれるような時間を届けたい」
ということでした。粉末やペーストの食品は、
個人の健康には役立つかもしれない。でも
「家族で囲む食卓」や「一緒に食べる楽しさ」にはつながらない。
お客さん自身が、子どもの頃に自然の恵みを受けた
食卓で過ごした時間を大切な思い出として持っていたんです。
だからこそ、その温かい記憶を届けるお店にしたいという気持ちが
根底にあったんですね。 この気づきによって、初めてお店の
「軸」が見えました。 本人の中にはもともとその想いがあったのだと思います。
でも言葉にされていなかった。明文化されていなかったからこそ、
周りのスタッフや関係者にも伝わりにくかった。
お店づくりは多くの人が関わるものなので、
共通の軸があることで初めて一貫性のある空間が
つくれるのだと改めて感じました。
人のことを聞いているときには冷静にわかるのですが、
これは自分自身にも言えることです。
僕自身も「自分は何を届けたいのか」「どうありたいのか」を
日々問い直しています。言葉にし続けて、
精度を上げていくことが大切だと実感しています。
お店の軸を見つけること。それは単なるコンセプトづくりではなく、
その人の生き方を映す作業なんだと感じた打ち合わせでした。
「まず最初に、なぜこのお店をやろうと思ったんですか?」と聞いています。
お店づくりのご相談をいただいて、
はじめて打ち合わせの場に座るとき。
僕が最初に大切にしているのは、
「どんな棚がほしいか」「どんなカウンターにするか」といった細部の話よりも、
もっと手前の根っこの部分を一緒に見つめることです。
もちろん、空間のイメージや設備の要望も聞きます。
でもその前に、
まず僕が必ずお聞きしているのが、
「なぜこのお店をはじめようと思ったんですか?」
という問いです。
この問いに対する答えって、
すぐに出てくる方もいれば、
「うーん…あらためて聞かれると…」と戸惑われる方もいます。
でも、この想いの原点を共有できるかどうかで、
その後の設計や施工の方向性が全然違ってくるんです。
「誰に、どんな価値を届けたいのか」
「その人が、お店を通してどんな時間を生み出したいのか」
そういう根っこの部分が見えてくると、
棚の高さや、カウンターの奥行きに意味が出てくる。
どこに入口をつくるか、
どの壁を開けておくか、
どこに視線が抜けるようにするか。
すべてが、想いをかたちにする作業に変わっていきます。
だから僕は、
たとえお客さん自身がまだ明確にできていなかったとしても、
ゆっくりと問いを投げかけながら、
一緒にその想いを掘り起こすような時間をつくっています。
焦らなくて大丈夫です
すぐに言葉にならなくてもいい。
むしろ、一緒に考えていくことこそが「いい打ち合わせ」なんじゃないかと思っています。
どんなお店にしたいかはもちろん大切だけど、
「なぜそのお店をやりたいのか」がしっかり見えていると、
設計も施工も、ぶれずに進んでいけます。
僕たちはこれからも、
図面の前に「人の話」をしっかり聞く工務店でありたいと思っています。
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#想いを聞く工務店
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#設計の前にヒアリング
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