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アフタートーク 自分の根っこにあるもの
独立してすぐの頃、 とにかく不安でいっぱいだった。
仕事があるかどうか、
食べていけるのか、家族を養えるのか。
誰にも見えないところで、
毎日、必死で心の中で自分に問いかけていた。
「僕、大丈夫か?」って。
でもその不安を見せるのが、とにかく怖かった。
“独立したんやろ、強くあれ”という声が、
どこかで聞こえてくるような気がして。
だから僕は、強さを演じることで安心を買おうとした。
ちょっと良い車に乗ってみたり、
良い時計をしてみたり、
「順調そうやな」って言われたくて。
もちろん、見せかけなんていつかバレるってわかってたし、
そんなことしても本当の安心なんて得られないって、
心の奥では気づいていた。
それでも、“大丈夫に見える自分”を演じることが、
唯一、その頃の自分を守る手段だった。
思い返せば、
もっとずっと前からそうだったのかもしれない。
高校生の頃から、
僕は「人と同じ」が嫌だった。
髪型を変えてみたり、古着を着たり、
周りと違う自分を演出していた。
「僕は人と違うんや」って言い聞かせることで、
どこかで自分の存在を肯定したかったのかもしれない。
でも、ほんとうに心から繋がっていた友達は、 多くなかった。
浅く広くもない、狭くて浅い関係が多かった。
ずっと、どこかで孤独を感じていた。
会社をつくって、社員が増えても、
「経営者は孤独や」と自分に言い聞かせて、
心の奥では「誰にもわかってもらえへん」って思ってた。
でも、最近ようやく、一緒にやっていける仲間が見えてきたんです。
嘘じゃなく、ちゃんと本音で繋がれる関係。
強さを見せなくても、受け入れてくれる人たち。
この感覚は、僕にとってものすごく大きな支えです。
そして、今ようやく少しずつ、
過去の自分を肯定できるようになってきた
気がしています。
そんな僕がずっと大切にしてきたのが、
リフォームという仕事です。
うちは新築をやっていません。
空き家や古い建物を活かして再生すること、
そこに強い思いがあります。
なぜかと言うと、
僕は「壊して新しくする」ことに違和感が
あるからです。
古いものには、その場所で過ごしてきた時間がある。
歴史があり、誰かの想いが残っている。
目には見えないけど、
確かにそこにある「気配」みたいなものを、
僕は大切にしたいと思う。
だから、
工業製品のような“新建材”はなるべく使いたくない。
使っても使っても、
味が出てこないから。
年数が経つほどに魅力が増す、
そういう素材で空間をつくっていきたい。
それは、まるで自分自身にも重なる。
過去をなかったことにしたり、
弱さを隠して新しい自分を演じるんじゃなくて、
今まで生きてきた“そのまま”を抱きしめながら、
また歩き出していく
—— そんな姿を、空間を通して支えたいと思っている。
「人が人らしくいられる場所を。」
これは会社の理念でもあるけれど、
今の僕自身の在り方でもあると思っている。
強がらなくていい。 大きく見せなくてもいい。
不安があってもいい。 ちゃんと一人ひとりが、
そのままで価値があると思える場所。
そんな空間をつくっていくことが、
自分自身を整えることにもなっている。
ようやく僕は、強さを演じる自分から、
ほんとうの自分に還ってこられた気がしている。
僕がこうした価値観を持つようになった背景には、
小さい頃に育った田舎での記憶がある。
そこには人と人との関係性があった。
顔が見えるやり取り、心のつながり。
お金や物じゃない、人の温度がちゃんとある世界。
決して裕福とは言えない地域だったと思う。
でも、子どもながらに「豊かそうだな」と感じていた。
小さな商店がいくつも並んでいて、
「これ、今日も美味しいよ」と声をかけてもらえるような、
そんな顔の見えるやり取りが日常にあった。
きっと僕は、その光景に安心していたし、
あの景色を、もう一度取り戻したいんだと思う。
これからも、
自分らしくいられる場所を、
誰かと一緒に、
少しずつ、
増やしていきたいと思っています。
この道を選んでよかったと思えるように。これまでと、これから。
こんにちは。
ここまで9回にわたって、僕たちの会社が大切にしている考え方や、
地域・お客さま・仲間との関係性について書いてきました。
今回はその締めくくりとして、
僕自身が「なぜこの道を歩んできたのか」
そしてこれから「何を目指して進んでいくのか」を、あらためて綴ってみたいと思います。
■ あのとき憧れた大人の背中が、今の自分につながっている
小学4年生の頃。
家をリフォームしてくれた大工さんの姿に憧れて、
「将来は自分もこんなふうに働きたい」と思ったのが、すべての原点でした。
それから大工として働き、独立して、仲間と出会い、
たくさんのお客さまや現場と向き合いながら、少しずつ「自分の仕事」をつくってきました。
気づけば、あのときの大工さんと同じように、
誰かの人生の節目に立ち会う仕事を、自分もしている。
■ 空間をつくる仕事は、人と向き合う仕事
この10回のブログを通して伝えてきたことは、
どれも「建築」という言葉だけでは収まりきらないものばかりです。
- 不安と希望を行き来するお客さまに寄り添うこと
- 働く仲間の人生を、少しでもいい方向に進めたいと思うこと
- 古いものの中にある価値を見出し、再生していくこと
- まちの中に、あたたかい循環を生み出すこと
僕たちが手がけているのは、建物でありながら、
同時に“人が人らしくいられる場所”そのものなのだと思います。
■ 「この会社でよかった」「この空間でよかった」と言ってもらえるように
これからも、小さな空間を一つひとつ丁寧につくっていきます。
そこに立つ人が、自分らしくいられるように。
地域の中で関係性が育まれるように。
大人の姿を見た子どもたちが、「将来がちょっと楽しみ」と思えるように。
僕たちの仕事が、そんな未来の“きっかけ”になれたら、それが何よりの喜びです。
■ 最後に
10回にわたるこのブログシリーズを読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
ここまで言葉にしてみて、あらためて自分の想いや考えが整理され、深まりました。
この道を選んでよかった。
そう思える瞬間を、これからも増やしていきたいと思います。
そしてその先に、
「この人と関われてよかった」「この場所があってよかった」
そう思っていただけるような仕事を、ずっと続けていきたいです。
ここで一つの区切りになりますが、
またどこかで、新しい言葉を紡いでいけたら嬉しいです。
これからも、よろしくお願いします。
「建てて終わり」じゃなくて、「関係が育つ」仕事をしたい
こんにちは。
このブログでは、僕たちの仕事に込めている想いや、日々の考えを綴っています。
前回は、なぜ僕たちがリフォームや自然素材にこだわっているのか、
そこにある「育っていく空間」の考え方について書きました。
今回は、その延長として、お客さまや地域との“関係づくり”についてお話ししたいと思います。
■ 建築の仕事は「終わり」じゃなく「始まり」
お店をつくる。
その日、引き渡しが終わったからといって、僕たちの仕事が終わるわけではありません。
むしろ、そこからが本当の関係のスタートだと思っています。
その人の暮らしが始まり、仕事が始まり、日々が動き出す。
空間が“生きはじめる”のは、引き渡しの後なんですよね。
■ 顔が思い浮かぶ関係を、大切にしたい
僕たちは、お客さまのことを「物件番号」や「案件名」で呼ぶことはありません。
名前で呼ぶし、顔が浮かぶし、やりとりの中で笑った場面も覚えています。
だからこそ、数年後に
「またちょっと直したくて」「ここ、相談してもいい?」
と言ってもらえることが本当にうれしい。
一度きりじゃない、関係が“続いていく”ことそのものが価値なんだと思っています。
■ 施工の途中も、「人と人」として向き合いたい
たとえば、こんなことを心がけています。
- 打ち合わせ前には事前に簡単な内容を伝える
- お客さまのペースに合わせた確認や説明をする
- 施工中は日々の報告を丁寧に行う
- 完成後も「何かあったらすぐ連絡くださいね」と伝える
どれも特別なことではないけれど、
こうしたやりとりの積み重ねが、信頼や安心感につながっていくんですよね。
■ 地域とのつながりも、“点”ではなく“線”で
地域の中で仕事をするということは、看板を出す以上の意味があります。
- ご近所の方が工事中に声をかけてくださる
- 完成後のお店に地域の人が集まってくれる
- 「あの人がつくったお店やで」と誰かが紹介してくれる
そうやって、地域の風景の一部として関係が育っていく。
それは、売上以上にうれしいことだったりします。
■ 関係性が、まちの空気をあたためていく
「このお店があってよかった」
「この人に頼んでよかった」
そんな声が、地域に少しずつ増えていくと、
まち全体の空気がちょっとやさしくなる気がします。
その起点に、僕たちの仕事がなれるなら——
それはすごく誇らしいことだなと思うんです。
次回は、僕たちの仕事が“暮らしと経済”にどう関わるかについて
次回は、少し視点を広げて、
僕たちのような小さな工務店が、どんなふうに地域の“暮らし”や“経済の流れ”に貢献しているか、
そしてそれがどう「温度のある社会づくり」につながっているかを掘ってみたいと思います。
また読みにきていただけたらうれしいです。
小さな工務店が支える、暮らしと経済の“あたたかい循環”
こんにちは。
このブログでは、僕たちの仕事を通して大切にしていることや、考えていることを綴っています。
これまで、「人が人らしくいられる場所を」という理念からはじまり、
地域やお客さまとの関係のこと、リフォームへのこだわりなどを書いてきました。
今回は、少し視点を広げて、
僕たちのような小さな工務店が、地域の暮らしや経済にどう関わっているのか?
というテーマでお話ししたいと思います。
■ 「まちの経済」は、顔が見えるところから回りはじめる
最近よく言われる“地域経済”という言葉。
でも実際は、難しい話ではなくて、もっと素朴なことだと思っています。
- このまちの人が、このまちの大工に工事を頼む
- 地元の材木屋さんや左官屋さんと一緒に仕事をする
- 出来上がったお店に、近所の人がふらっと立ち寄る
そんな風に、お金と会話が地元の中でぐるぐる回っていく。
それが、“温度のある経済の循環”だと僕は感じています。
■ 「小さな仕事」を、ちゃんと届けること
僕たちがやっているのは、大きなビルでも、大規模開発でもありません。
でも、小さなリフォームや、お店づくり、空き家再生の仕事には、
人の想いと地域のつながりが詰まっている。
- ひとつの空間を再生する
- ひとりの人生のはじまりを支える
- ひとつのまちの景色を変える
その積み重ねが、地域に新しい風を吹かせると思うんです。
■ 「誰のために、どこで使うか」が未来を変えていく
今の時代、便利さや価格だけでモノを選ぶこともできます。
でも、少しだけ立ち止まって、
- この仕事、誰に頼む?
- この家具、どこで買う?
- このスペース、誰に借りる?
そんな問いを、自分に投げかけてみる。
それだけで、経済の“流れ”が大きく変わると思うんです。
■ 僕たちがしたいのは、「温度のある経済づくり」
お金がただ回るのではなく、
人と人との信頼や、想いごと回っていくような経済。
それが、僕たちがリフォームや小さなお店づくりにこだわる理由でもあります。
- 誰かの「はじまり」を支える仕事
- そこに関わる仲間たちと、共に育っていくこと
- そしてそれが、地域をちょっとずつ元気にしていくこと
それら全部が、僕たちがつくりたい「人が人らしくいられる場所」とつながっているんです。
次回は、最終回。「これまでの歩みと、これからのこと」
次回はいよいよ最終回。
ここまで書いてきたことを振り返りながら、
あらためて僕自身がこの仕事に何を感じてきたのか、
そしてこれからどうしていきたいのか、素直に書いてみようと思っています。
またぜひ、読みにきていただけたらうれしいです。