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ケーキ屋「小さな菓子屋aya」開業ストーリー 第1話
「中学生のチーズケーキが生んだ、小さな夢の芽生え」
「お店を持ちたい」
今でこそ自分のお店を営んでいる私ですが、その想いの芽生えは驚くほど素朴なものでした。
まだ中学生の頃、バレンタインに友達へプレゼントするために作ったチーズケーキ。それがすべてのはじまりでした。市販のミキサーで材料を混ぜ、焼き上げたシンプルなチーズケーキでしたが、家族や友達が「美味しい!」「すごい!」と褒めてくれたのがとにかく嬉しくて。「あれ?私が作ったものでも人を喜ばせることができるんだ…」そう感じた瞬間だったと思います。
この時はまだ「お店をやりたい」という具体的なビジョンがあったわけではありません。ただ漠然と「何か作る仕事に携わりたい」「自分が作ったお菓子で人を笑顔にできたらいいな」と感じるようになりました。
その後、高校、専門、留学と進み、いよいよ就職活動の時期。迷わずお菓子に関わる仕事を探し、ケーキ屋さんへの就職を決めました。そこで働くうちに、作ることの楽しさや奥深さを学びました。実際、私は人と関わることが好きなんだなと、この時あらためて実感していきました。
正直、この頃も「いつか自分のお店をやりたい」と周りに宣言していたわけではありません。でも心のどこかでは、「こういう仕事を続けていけたら幸せだな」「いずれは自分の空間でお菓子を提供できたらいいな」という気持ちはずっとありました。
そして転機は、10年以上勤めた職場で訪れました。店舗が移転することになったのです。
この話を聞いたとき、私は思いました。
「ああ、今がそのタイミングなのかもしれない」
もちろん不安もありました。これまで築いてきた人間関係や安定した環境を離れることへの怖さ、経営の知識もない自分が本当にやっていけるのか。周りからは「転職したら?」「他の店に勤める道もあるよ」との声もありました。でも、私は新しい人間関係をゼロから作るのが得意ではなく、雇われの立場でまた一から始める気持ちにはどうしてもなれませんでした。
それなら、自分の店をやってみたい。
そう決意してからは、少しずつ現実的な準備に動き出しました。何より大きかったのは、家族の理解と支えでした。夫も「いいやん、やってみたら?」と背中を押してくれました。もちろん心配はあったはずです。資金面、場所探し、開業後の生活…。でも反対することなく、私の挑戦を応援してくれました。
職場の上司も、本当に温かい方でした。今でも思い出しますが、独立の相談をした時「これまで本当に頑張ってきたから、あなたならできるよ」と言ってくださったんです。これまで目の前の仕事を精一杯続けてきたことが、いつの間にか信頼に繋がっていたんだと感じました。
こうして、「自分のお店をやる」という決意が少しずつ固まっていきました。
とはいえ、いざ動き出してみると、想像以上にわからないことだらけでした。物件探し、厨房設備、開業手続き、予算の組み立て…。何から手をつけたら良いのかわからず、最初はとにかく経験者の声を聞きまくりました。同じようにお店を出していた先輩に資金の目安を聞いたり、設備をどう揃えたのかを教えてもらったり、ひたすら情報収集の日々でした。
そんな中で、資金面については「銀行に頼らず、今までの貯蓄で何とかする」と決めました。勤務時代から少しずつコツコツ貯めてきた現金。実はそれが、長年現金手渡しで給料をもらっていたこともあり、自然と貯まっていたのです。その存在が、自分を少し勇気づけてくれていました。
事業計画書も、自分の頭を整理するために作成しました。誰に見せるわけでもなく、自分のノートにまとめたものです。「売上はどのくらい必要なのか?」「必要な設備は何か?」「ランニングコストはどのくらいか?」。こうして書き出してみると、ぼんやりしていた不安も少し整理され、「やるべきこと」が可視化されていきました。
ただ、それでも不安は完全には消えませんでした。開業とは「自分が全て決めて、全て責任を取る」ということ。仕入れ先、メニュー、価格、営業日、休みの取り方――決断しなければならないことが山ほどありました。
それでも、不思議と「やめよう」とは思いませんでした。
ここまで来たらやるしかない。
そう思いながら、一歩一歩、準備を進めていったのです。