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cafe&kitchen MANABI 「これじゃない」と思ったあの日から、すべては始まった。
〜ある厨房で芽生えた、“自分の店”という選択〜
「料理やりたいって思ってたのに…」
そう語ってくれたのは、現在カフェを営む桑名さん。
大和郡山市で、ランチ時には行列ができるお店を経営しています。
けれど、その原点には、誰にも言えない違和感がありました。
「これからはコーヒーが主力です」
かつて桑名さんは、ある飲食店で働いていました。料理人として腕を磨き、現場の責任者を任されるようになった頃、月1回の会議で本部の方針が発表されました。
「これからは、うちは“料理”よりも“コーヒー”をメインにしていきます」
その言葉に、彼の中で何かが止まりました。
「正直、それを言われたときに思いました。『じゃあ俺、ここで料理する意味ないな』って。」
もちろん、その企業の方針に誤りがあるわけではありません。けれど、自分が情熱を注いでいた“料理”に対する価値観とのズレを、どうしても受け入れられなかったのです。
「これ、自分の人生なんかな」
働く環境に大きな不満があったわけではありません。収入も安定していて、やりがいもあった。けれどふと、日々の中でこう思うことが増えていきました。
「自分やったら、こうするのにな」
「もっと、こうしたらお客さん喜んでくれるのに」
与えられた指示をこなすことに、どこかモヤモヤを感じるようになっていきました。
「思ったことを実現したくなった。多分その頃から、思考が“外”に向いていったんやと思います。」
「独立したい」が、現実になる
そんなとき、ある部長との会話がきっかけになります。
「損益分岐点って知ってる?自分の店をやるなら、そこをちゃんと計算せなあかんで」
軽く投げかけられたその一言で、初めて「事業計画」という言葉と向き合うようになりました。ざっくりと計算してみると…
「意外と、いけるんちゃう?って思ったんです。そう思えた瞬間から、スイッチが入りました。」
「不安はなかった。でも…」
起業には不安がつきもの。けれど当時の彼は、ワクワクしかなかったと振り返ります。
「不安?なかったですね。でも多分それは、まだ何も分かってなかったから(笑)」
それでも、周囲の支えは大きかったと言います。
「母親が“あんたがやるなら、やったらええやん”って言ってくれたんですよ。実家も自営業で、おばあちゃんも商売気質やったから。多分、その血を受け継いでるんやと思います。」
「人生を、自分の手に取り戻したい」
料理が好きだった。ただ、美味しいものをつくるだけじゃない。自分の判断で、自分の責任で、人を喜ばせたい。そんな想いがふつふつと湧いてきたのです。
「別に、よその店で修行してもよかったんです。でも、やってみたかった。“自分の看板”で。」
それは、「これじゃない」と思っていた日々に、さよならを告げるということ。
そして、自分の人生を、自分で選び直すということでした。